霧箱

「霧箱」とは,目に見えない放射線を可視化する実験です。ドライアイスとエタノールがあれば,家庭でも学校でもかんたんに実験ができます。

東日本大震災以降,理科教材としての「霧箱」の重要度が増し,性能向上のための様々な研究が行われています。平成20年度から,生徒と一緒に霧箱の研究をしています。得られた成果は各種発表会や原著論文にて発表しています。

1. 自身が開発に関わった霧箱

ヒートシンクを利用した霧箱   Bottom heat sink

大型ヒートシンクを用い,ドライアイス,液体窒素のいずれにも対応します。

A sensitive cloud chamber without radioactive sources, Phys. Educ. 47 (2012) 574 [arXiv:1202.2423]

融雪剤を利用した霧箱  Salt-ice bath

ドライアイスの代わりに融雪剤を用いた霧箱を開発しました。

Developing cloud chambers with high school students, JPS Conf. Proc. 1 (2014) 017015 [arXiv:1308.0977]

2. 様々な霧箱

「霧箱」を発明したのが C. T. R. Wilson だというのはとても有名ですが,彼が発明したのは「膨張型霧箱」といい,一瞬しか放射線が見えないものです。連続的に放射線を観測できる「拡散型霧箱」は A. Langsdorf により初めて開発されましたが,彼の装置は複雑なものでした。現在教育現場で用いられている,エタノールとドライアイスを用いるタイプの霧箱は NeedelsとNielsen のグループと Cowan により独立に発明されました。現在,教育用として取り組まれている工夫の多くは,扱いに難のあるドライアイスをより簡便な材料に置き換えようというものです。

原子論が現代の科学教育で最も重要な内容であることに,意義を唱える人はまずいないでしょう。しかしながら,ほとんどの児童/生徒/学生は,原子を「観る」ことのないまま卒業していきます。「霧箱」は,「ブラウン運動」の実験とともに,原子の実在を直感的に観察することのできる数少ない教材です。「霧箱」がより便利になることで,全ての子どもたちに実施できるようになることを夢見て,研究を進めています。







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